インテリアのノウハウ

家具の産地とメーカー

日本にはいくつかの大きな家具産地(メーカー集積地)があるのをご存じでしょうか?
基本的には木材業者+一次加工業者+二次加工業者+家具メーカー+塗装業者等が集積している場所となります。
5大家具産地というと、北海道旭川市/静岡県静岡市/岐阜県高山市/徳島県徳島市/福岡県大川市を指しますが、6大家具産地というとこれに広島県府中市が加わります。
また後述しますが、上記の都市に限らずその周辺の地域も含めた産地圏になっているのが一般的です。

各地域の特徴は以下の通りです。
私のコメントは個人的な評価なのでご参考程度に。
また、代表的なメーカーはアンダイ及びカギロイ時代にお付き合いのあったところや、展示会等で名刺交換させて頂いたところを中心に表示しています。

福岡県大川市

タンス作りから始まった大川家具ですが、今では国内で一番元気な産地となっています。春夏秋冬の4回大きな展示会を行っており他地域のメーカーもこの展示会に出展することが多くあります。
【参考】福岡・大川家具工業会

代表的なメーカー:関家具 広松木工 ヒラシマ ナガノインテリア工業 レグナテック シキファニチャー等 (大川市以外の福岡の産地や佐賀の工場もここに含まれます)
【個人的な評価】20年前に訪問した時にはデザインの意識が高いメーカーは広松木工さんぐらいしかありませんでした。家具工業会で聞いたときも大川にはおしゃれな家具はないと言われました。
その次に訪問した時には大川最大のメーカー関家具さんを案内していただきました。CRASH CRASHを見て面白い取り組みをしてると感じました。
ヒラシマさんともお付き合いがありましたが、ここもかなりおしゃれな家具になりました。
現在、早生広葉樹のセンダンを使った取り組みをされており、たいへん期待しています。

北海道旭川市

豊富な木資源を背景に木工集積団地として発展してきた旭川ですが、デザインへの意識が高い地域というイメージも大きくあります。地元で行うデザインウィークに加えて,東京での展示会にも積極的に参加しています。
【参考】旭川家具工業協同組合


代表的なメーカー:カンディハウス コサイン 匠工芸 大雪木工 ササキ工芸 アルフレックスジャパン プレステージジャパン(TIME&STYLE)等
【個人的な評価】国産広葉樹を含めた無垢材を活用し、非常にクォリティの高い商品を開発する地域というイメージがあります。カンディハウスさんが代表でしょう。以前お付き合いしていた工場は廃業されてしまったのですが、東北のお隣ということで何かの機会に旭川のメーカーとお付き合いする可能性もあります。
kitakamiの成形合板チェアは旭川でありませんが函館の近くで製作しています。

岐阜県高山市(飛騨)

飛騨の家具は曲木のイスから始まりましたが、現在も技術の高いイスを作っているイメージが強い地域です。飛騨の匠という制度で技術を売りにしています。
【参考】飛騨木工連合会


代表的なメーカー:飛騨産業 柏木工 日進木工 オークヴィレッジ等
【個人的な評価】
飛騨産業さんを代表に、無垢材の家具を中心に職人が作っているというイメージが強い地域です。スポークチェアのような脚モノが印象的です。また小さい工房が多いのも特徴です。
飛騨産業さんは国産材の活用にも力を入れています。

徳島県徳島市

船大工から始まった徳島家具は鏡台の一大産地という時代もありました。現在は銘木を中心に家庭用の家具を生産しています。
【参考】協同組合ティ・アイ・ピー


代表的なメーカー:冨士ファニチア 宮崎椅子 イストク テーブル工房kiki等
【個人的な評価】6地域は全て複数回訪問していますが、徳島が一番多く訪問した地域となります。東北に拠点を移した今、彼の地はかなり離れていますが今後もお世話になることが多いと思われます。
特に宮崎椅子製作所さんとは20年以上のお付き合いです。

静岡県静岡市

漆器作りから始まり鏡台の生産を経て現在に至ります。静岡市以外に島田市、焼津市、藤枝市が産地の中心となります。
【参考】静岡県家具協同組合


代表的なメーカー:起立木工 久和屋 DCScorp等
【個人的な評価】他の地域と比較するとメーカーより造作家具のイメージが強いように思えます。またデザイナーものの家具が少ないため、既製品としてはあまりお付き合いがありませんでした。
ただし、造作家具やJパネルの工場とはお付き合いがあります。

広島県府中市

古くから婚礼家具を作っていた地域で、タンス等の箱モノが特徴です。
【参考】府中家具工業協同組合


代表的なメーカー:若葉家具 土井木工等 (府中ではないがmaruniも同じ広島県)
【個人的な評価】婚礼家具を作っていた産地ですが、近年デザイナーを要し昔ながらの家具からの脱却を図っています。デザイナーズ家具としてはまだこれからの産地ということもあり価格がお買い得なものも多くあります。

東北の家具産地

アンダイとしてはできるだけ地元のメーカーを活用したいのですが、宮城県には既製品メーカーがほとんどありません。山形県・秋田県・福島県にはいくつかありますがかなり技術的に絞られてきます。
その中でも山形にはカッシーナやアルフレックスのOEMを生産する工場があります。ただし、技術の高いところはOEMを依頼するハードルも高いと言えます。

山形県の代表的なメーカー:天童木工(成形合板が得意・OEMは基本的に行わない???)
             朝日相扶(OEMの最大手・kitakamiは断られました)
秋田県の代表的なメーカー:秋田木工(3次元曲木の工場、kitakamiをお願いしています)

その他の産地

愛知県の代表的なメーカー:カリモク(家庭用木製家具売上No.1) オリバー(業務用木製家具売上No.1)
             朝日木材加工 岡崎製材等
岡山県の代表的なメーカー:アカセ木工(ウォールナットの在庫多し) テオリ(竹の家具)等
大阪府の代表的なメーカー:相合家具 グラフ トラック等

2種類の家具メーカー

ところで、話は変わりますが家具工場には大きく分けると2種類の形態があります。
一つは既製品家具工場で、カタログに載せた家具を正確に生産していく業態です。
もう一つは造作家具工場で、デザイナーや建築家が都度空間に合わせて設計した家具を生産する形態です。
一般的には前者の方が大量生産するため工場も大きく、またNC加工機を含め高度な機械を保有しています。私が代表的なメーカーの事例にあげた工場はほとんどこちらのタイプです。
例えばイスやソファは、座り心地や強度を長時間検討しJIS基準の試験に通ったものを販売します。デザインや構造がギリギリまで計算されているため、ちょっと仕様を変えるというのも難しかったりします。
一方造作家具工場の特徴としては、都度新しい設計に対応する応用力と機動力といったところでしょうか。現場での設置等にも対応します。作り付けのカウンターや棚等がメインの商品となります。
半面、同じものを作り続けることは難しいでしょう。

アンダイでは精度の高い既製品家具を中心に販売していますが、外部工場を利用しオリジナルデザインの造作家具を提供することも可能です。

以上、少しマニアックなお話になりましたがご参考になりましたでしょうか。

この記事を書いた人【インテリアプランナー:鹿野勝則】