インテリアのノウハウ

森林認証制度について

SDGs”が注目されていますが、我々家具屋の世界では『どのような木を使うか』ということが、地球環境の持続性に対し大きく関わってきます。
SDGsに関してはこちら

家具に使用される木材には国産材もありますが多くは輸入材となります。
輸入される地域と代表的な木材は以下の通りです。
 ・アジア(チーク、ラワン、ローズウッド、コクタン、ニヤトー等)
 ・北米(ウォールナット、ホワイトオーク、ブラックチェリー、ホワイトアッシュ等)
 ・南米(マホガニー、ブラジリアンローズウッド、パープルハート等)
 ・ヨーロッパ(ヨーロピアンオーク、ヨーロピアンバーチ、ヨーロピアンビーチ等)
 ・アフリカ(ウエンジ、ブビンガ、サペリ、ゼブラノ等)
 ・オセアニア(ユーカリ、アカシア、アガチス等)

この中で、東南アジア・南米・アフリカそしてロシアに関しては違法伐採を指摘されている地域であり森林減少率が高いところでもあります。(注:もちろんすべてが違法というわけではありません)
木材の伐採自体は悪いことではありませんが、問題は伐採の方法や切りすぎ、切った場所に植林しない等により森林が急速に減ってしまうことが持続性を妨げる問題となります。

森林認証制度とは、このような違法伐採をなくすため『適正に管理された森林に与えられる証明』のことです。この証明があれば私たちが木材を選択するときに『合法木材(フェアウッド)』を選ぶことが可能となります。

また森林認証と言うと『森林をどのように管理するか』という点が重要だと思われがちですが、適切に管理された木材でも流通の過程でそうでないものと一緒になってしまうと、見分けがつかなくなってしまいます。
最近福島県沖で取れたマグロを青森大間の市場に出品することによって、大間産のまぐろに偽装するという問題がありました。マネーロンダリングではありませんが、このようなことを防ぐため流通の経路を管理することも必要になってきます。
森林の管理に関する認証をFM(Forest Management)と呼びます。
流通における認証をCoC(Chain of Custady)と呼びます。
森林認証制度にはFMとCoCの2種類あるということです。

さて現在、日本で利用されている主な森林認証制度には2つの系統があります。

1.FSC認証
2.SGEC/PEFC

このうちFSCは世界で初めての森林認証制度です。全世界統一基準で管理方法も厳しいものとなっています。
一方SGEC/PEFCに関しては、日本独自のSGECという森林認証制度と国際的な認証制度であるPEFCが相互認証を果たしたものとなっています。国際的な広がりを求めたSGECと世界的にはFSCに先行されているPEFCが市場拡大を目指して手を組んだものと考えられますが、それなりに意味はあります。
というのも、日本の小規模な林業家や木材業者にはSGECを取得しているがFSCは持っていないというところが多いからです。
FSCの商品を作ろうと思っても、材料が入手できなかったり作ってもらえるところがなかったりするわけです。
特に中小の業者の場合、FSCの認証にかかるコストが売り上げに対して大きすぎるという話をよく聞きます。CoCの年間費用が小さな企業でも40万円くらいかかり、手広くやっているところだと数百万円かかるようです。今のところ、よほど売上を上げているところでないと認証取得にはしり込みしてしまうでしょう。大企業であればCSR的観点から進めることはあるかと思いますが。

さて、具体的に各制度の特徴を見てみましょう。

FSC認証SGEC/PEFC
PEFC

SGEC
正式名称  Forest Stewardship Counsil            Programme for
the Endorsement of
Forest Certification Scheme
Sustainable Green
Ecosystem Council    
設立年199420141999(欧州11か国)
2003(全世界)
2003(日本のみ)
事業主体FSC(世界@ドイツ/ボン)
———————————–
FSCジャパン(日本)
PEFC(世界@スイス/ジュネーブ)
————————————-
一般社団法人緑の循環認証会議
(SGEC/PEFCジャパン)(日本)
PEFC(世界@スイス/ジュネーブ)一般社団法人緑の循環認証会議
(日本)
FM認証
森林面積
(全世界)
219,467,696 ha328,464,110 ha
対象国数81ヶ国50ヶ国
FM認証
森林面積
(国内)
419,340 ha2,149,419 ha
CoC認証
取得数
(全世界)
51,000件11,741件
CoC認証
取得数
(国内)
1,908件510件
特徴世界共通の1つの規格に基づき
審査認証されるもの
各国で独立して設立運営される
森林認証制度の連合体であること。
(相互認証という形をとる)
※2022年5月24日のデータ

このデータを見る限りでは、国内のFM認証林はSGEC/PEFCがFSCの5倍ありそうです。
また、CoCはFSCのほうが多いように見えますが、私の知っている情報ではすでにFSC認証を取得して企業もSGEC/PEFCを取得に動いているようです。供給側とのバランスをとっているといった感じでしょうか。

ここまでの説明では、FSCよりもSGEC/PEFCの肩を持っているように思われるかもしれませんが、それは少しでもSDGs=森林認証制度がビジネスにつながって、社会に組み込まれるようになって欲しいからです。
理想は以下のようなものです。
 1:消費者が少しでも環境に良い木製品を買うようになって欲しい。
 2:認証に関わる費用は商品価格に転嫁されるため、できるだけ安くして欲しい。
   そして、生産側もできるだけ良い木材を使うようになって欲しい。

私が一緒に仕事をしている登米町森林組合の杜はFSC-FMの認証を取得しており、プレカット工場はFSC-CoCの認証を取得しています。私が以前は働いていた会社もFSC-CoC認証を取得していましたが、それがビジネスにつながった事例は多くありません。
ぜひ皆さまが今後家具を購入される際には、使われている木材が違法に伐採されたものでないか確認してみてください。

■確認方法

1.国産材
   ・国産材の場合は違法伐採というのはあまり考えらえませんが、皆伐した材はできれば避けたい
    ところです。
   ・FSC材、SGEC/PEFC材であれば文句はありません。
    次に産地証明が頂ける材であれば、これもほとんど問題はないと思われます。

2.輸入材
   ・FSC材、PEFC材であれば問題はありません。
   ・北米産や欧州産であれば比較的安全だと思われます。
   ・日本で作っているメーカーはある程度信頼のおける木材業者まではトレースできますが、
    伐採先までは負えないことが多いと思います。
   ・中国や東南アジア製の場合は調達先をきちんと確認しましょう。
    (トレーサビリティがないことも多いと思われます)

この記事を書いた人【元企業FSC認証担当:鹿野勝則】